2008年5月5日(月) 天候 晴のち雨のち曇

 朝は6時半に起床した。今日は台湾南部を横断して太平洋側に向かう予定である。ホテルの朝食を食し、荷造りをして8:00過ぎにホテルを出発した。

 台南市内のバイク軍団の渋滞を潜り抜け、省道20号を東に走行した。向かうは南部横貫公路(省道20号の一部)である。南部横貫公路(以下、南横公路)は台南県玉井から台東県海端までの209kmの横断道路で、中央山脈を横断して台湾海峡側と太平洋側を結ぶことになる。昨日マンゴーカキ氷を食した玉井を過ぎしばらくすると、南横公路の起点と思われるマンゴーのモニュメントが見えてきたので記念撮影をして、南横公路に足を踏み入れた。

 南横公路は険しい山道になると想定されたため、近くにあったスタンドでガソリンを補充した。しばらくすると見えてきた宝来温泉を通り過ぎると、道路は山の中に入っていった。山中をひたすら走り続けると、桃源郷のゲートが見えてきた。ゲートを潜り抜けた後しばらくすると下り坂となり、山を下ると桃源郷の集落に到着した。桃源郷のモニュメント前で記念撮影をした。町中は山中のひっそりとした感じであり、道行く人は原住民族系の人々である。桃源郷に到着したら目指すは少年渓温泉であった。標識に「少年温泉」とあったので南横公路を左折し、吊橋を渡り山道を登ると温泉に到着した。しかし、浴槽には湯が入っていなく入れる状態ではなかった。せっかくここまで来たのに大変残念であった。ひょっとしたら間違えたのかも知れなかったが、他にそれらしきところを見つけることができなかった。仕方がないので少し小高い丘の上から集落の記念撮影だけをして再び南部縦貫公路に戻り、東へ走り出した。

 南横公路はますます高度を上げていった。途中1橋の吊橋を見つけたが、路面がへし折れていて渡ることができなかった。台湾大地震でこのようになったのかもしれない。しばらく走行すると玉山国立公園の入り口に差し掛かったので記念撮影をして先を急いだ。南部横貫公路はさらに高度を上げていった。周りの景色も険しい山々ばかりとなり、どこまで上るのか少し不安になってきた。さらに霧が立ち込め雨もぱらついてきた。さらに走行すると雨が強くなってきたので、レインウェアを着用しようと雨宿りできる箇所を模索していたところ、天池に到着したので、近くの木陰に避難してレインウェアを着用した。

 天池は森の中に囲まれた山の中にある池である。また、天池の途中にある長青祠は、南横公路を切り開くために犠牲者を祀るため建立されたという。林務局天池招待所にバイクを駐車し、急な階段を昇るとまずは長青祠にたどり着いた。さらに遊歩道を5〜6分歩くと天池に到着した。生憎の霧の中ではあったが、霧の中から見える緑色の池面が神秘的であった。しばらく天池を眺めた後、長青祠でも記念撮影をしてバイクまで戻り再び出発した。

 南横公路をさらに走行すると檜谷にたどり着いた。このあたりは紅檜の原生林が広がっており、樹齢数百年を超えているであろう巨木が、霧の中に生い茂っている様は神秘的である。すれ違う車両もほとんど皆無であり、少し怖いくらいであった。記念撮影をして次に進んだ。

 檜谷を過ぎても南横公路はさらに高度を上げていった。周りも木々の生い茂った風景から、荒涼とした急峻な渓谷の風景へと変貌していった。所々に崖崩れの跡が見受けられ、いつ崖崩れが起こってもおかしくないような感じがした。すれ違う車両もほとんど皆無であり、このようなところで転落しても誰も発見してくれないであろう。少し怖い思いをしながら走行し続けると、大関山トンネルにたどり着いた。大関山トンネルは高雄県と台東県との境界部にある全長615mのトンネルで、冬には氷柱ができるという。記念撮影をしてトンネルに入ったが、1.5車線ほどの幅であり、しかも中は照明がなくバイクのライトだけが頼りであったので、対向車が来ないか不安であった。トンネルを抜けようやく●(●は土へんに亞)口にたどり着いた。時刻は14:00をまわっていた。

 ●口は南横公路の最高地点であり、標高は2722mである。一昨日走行した中部横貫公路に続き、日本の道路最高地点をスクーターでまたしても超えてしまった。台湾の山の険しさをつくづく実感してしまった。バイクを駐車し、休憩所から見える山々を眺めた。駐車場には車両が何台も駐車され、観光客も結構いた。今まで車両とのすれ違いがほとんどなかったことが嘘のようであった。晴れていれば雲海が見えるということである。生憎の空模様で雲海は見ることができなかったが、霧に見え隠れする関山の風景は大変神秘的であった。景色を眺めていると小康状態だった雨がまた降り出したので、先を急ぐべく出発した。

 ●口を過ぎると南横公路は下り坂に入った。道路は急峻な山肌を張り付くように下っていった。ここで気がかりとなったのはガソリンの残量であった。南横公路の入り口付近で給油してからガソリンスタンドがなかったのでまったく給油できなかったので、メータの残量がほとんどなくなっていた。この先もガソリンスタンドがある見込みは薄そうなので、下り坂を利用して経済走行で乗り切ることにした。1時間ほど走行すると霧鹿峡谷にたどり着いた。霧鹿峡谷は太魯閣をも上回るスケールといわれており、断崖が道路の両側に迫り迫力満点であった。また、谷底を流れる川は緑色をしており神秘的であった。太魯閣と異なり観光客が皆無で時々車両が通り過ぎるのみであり、周りは私一人であったので少し怖いくらいであった。しかしこの風景を独り占め出来しばし優越感に浸ってしまった。

 霧鹿峡谷を後にしてさらに南横公路を下った。燃費を最小限にするために経済走行をしていたが、南横公路の終点から手前20km付近でとうとうガス欠になってしまった。このまま下り坂を惰性で下れるだけ下ろうとしたが、平坦な区間や上り坂などが結構あり、惰性で乗り切れる感じではなかった。途中ですれ違ったパトカーを止めて事情を話したが、言葉がよく通じず結局パトカーは立ち去ってしまった。仕方がないのでバイクを押し続けていると一台のトラックが後ろからやってきた。わらをもすがる思いでトラックを止めると、2人の男性がトラックから降りてきたので事情を話すと(ゼスチャーと英語と旅の指差し会話帳で)、ガス欠であることを理解してくれたようであった。トラックにバイクを載せろとのゼスチャーをされたのでバイクをトラックのそばに持っていくと、2人はリフトを使い、手際よく荷台にバイクを載せてくれた。バイクを載せた後、私にもトラックに乗るように言われたので車内に乗り込んだ。まさかガス欠になってから20分ほどでこのような幸運に恵まれるとは誠にラッキーであった。この2人が神に見えた。

 トラックは南横公路をひたすら走り続けた。20分ほど走るとこれまでの荒涼とした風景から田園地帯へと景色が変わった。さらに10分ほどすると海端に到着した。道路沿いのガソリンスタンドでバイクを下ろしてもらった。お礼を言うと2人ははにかんだような会釈をしてそのまま立ち去った。ここでも台湾の人の親切さが身にしみた。時間も16:30過ぎでありほとんどロスしていなかった。早速ガソリンを給油して走り出し、南横公路の終点で記念撮影をした。厳しい道のりであったが、走りきったという充実感にあふれていた。(最後はトラックに乗せてもらったが・・・)

 南横公路を制覇した後、朝食以来何も食していなかったので、遅い昼食を取ることにした。地図を見ると、あの便当(弁当)で有名な池上がわずか6kmほどのところにあったので、すかさず池上に向かうことに決定した。省道9号を北上し10分ほどで池上車站に到着した。駅前で記念撮影をして、駅前にある便当を販売している「全美行池上便当」の本店に入った。「全美行池上便当」は日本統治時代の1926年創業の老舗であり、月台便当(駅弁)で台湾中に名前が知れている。便当(60元)を購入し、店内で食した。中身は肉や煮卵がご飯の上に満載でボリュームもあり大変満足した。朝から走りっぱなしで疲れと空腹もあり満足度はひとしおだった。

 食事を終えたところで時刻を見ると17:30を過ぎていたので、今夜の宿泊地を決めなければならなかった。池上にはそれらしい宿泊施設が見受けられなかったので、地図を見てめぼしいホテルがありそうな都市を探したところ、40kmあまり距離があるが台東ならば大丈夫であろうと考え台東に向かうことにした。台東には省道9号を南へ走行した。途中の道路沿いは米どころでも有名な池上らしい田園地帯が当たり一面に広がっていた。この付近は熱帯ということもあり、まだ5月だというのにもう稲が成長しきっていてあとは黄金色になるのを待つだけの様であった。二毛作を行っているのかもしれない。省道9号は片側2車線でバイクレーンもあったので距離を稼ぐことができ、19:00には台東の中心部(旧站:旧台東駅付近)に到着した。

 中心部に到着し、ガイドブックにあった「東之郷大飯店」にチェックインした。(1000元) ここも他の台湾のホテルと同様、ガイドブックに掲載されていた料金より半額以上の安値であった。レインウェアを脱ぎ、荷物も置いて身軽になり街中に繰り出した。まずは台東で有名な「北平半畝園」に向かった。中山路から中正路に入って間もなくを見つけた。店内に入り「牛肉刀削麺」(70元)を注文した。店頭では店のご主人が麺を手際よく削って鍋に入れていた。しばらくすると麺が出てきたのですかさず食した。牛肉と麺とが絡み合いうまかった。食後は天后宮・果物市場など中心に街中を見て回った。台東にきたら一度は食してみたいものが「釈迦頭」であった。「釈迦頭」は名前のとおり釈迦の頭の形をしたフルーツで、台東はその特産地であるという。しかしながら旬は8〜9月であるとのことなので、市場の店頭には並んでいなかった。仕方がないので24時間営業の果物店「富有農産品」にてカットフルーツ(たぶんメロン 25元)を購入しホテルに戻った。ホテルにてカットフルーツを食し満足したところでシャワーを浴び就寝した。

(走行距離:283.5km)

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